「退職代行が逮捕された」——そのニュースを見て、辞めたい気持ちにまた鍵をかけてしまった人もいるかもしれません。物流の現場で20年以上、「辞めたい」と言えずに耐えてきた私も、こういう報道が出るたびに「やっぱり怖い世界なんだ」と足がすくんだ側の人間です。
でも、落ち着いて中身を見ていくと、怖がるべきなのは制度そのものではなく「業者の選び方」だと分かります。あなたが罪に問われることはありません。その根拠を、一つずつ一緒に確認していきましょう。
📝 2026年7月更新:モームリ事件の起訴(2026年2月24日)や運営体制の刷新など、最新の状況を反映して記事を全面リライトしました。
2026年2月、退職代行業界に激震が走りました。業界最大手のひとつ「退職代行モームリ」の運営会社社長らが、弁護士法違反(非弁提携)の疑いで逮捕・起訴されたのです。
SNSでは「退職代行そのものが違法なの?」「利用した自分も罪に問われるの?」という不安が、あっという間に広がりました。あの空気を見て、胸がざわついた方も多いと思います。
だからこそ、まず一番大事な結論をお伝えします。退職代行を利用したこと自体で、あなたが罪に問われることは一切ありません。問題はいつも「業者が何をするか」の側にあります。この記事では、弁護士法の観点から合法と違法の境界線を、できるだけやさしく解説します。
- 退職意思を「伝えるだけ」→ 合法(民間業者も可)
- 退職日・有給などを「交渉する」→ 弁護士か労働組合のみ合法
- 利用者を弁護士に「有償で紹介する」→ 非弁提携で違法(今回の事件の核心)
退職代行の合法・違法を分ける「弁護士法第72条」とは
合法か違法かを分ける最大の基準は、弁護士法第72条にあります。名前だけ見ると身構えてしまいますが、核心はとてもシンプルです。肩の力を抜いて読み進めてください。
① 弁護士法第72条の条文
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
(出典:e-Gov法令検索/弁護士法 昭和24年法律第205号)
② 「非弁行為」を3行で理解する
- 弁護士以外の者が、報酬目的で法律相談・交渉・代理などの「法律事務」を行うことを禁止
- 違反すると「2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」という重い罰則がある
- 退職代行では、民間業者が「交渉」に踏み込むと非弁行為に該当する可能性が高い
③ 「使者」と「代理人」の違い(合否を分けるポイント)
難しく見えて、分かれ道はたった一つ。「使者」なのか「代理人」なのか、それだけです。荷物でいえば、決まった伝票をそのまま届けるのか、中身の条件を先方と話し合うのか——その差だと思ってください。
✅ 合法:使者としての取次
「本人が『本日付で退職します』と申しておりますので、退職届をお送りします」と会社へ伝える。本人がすでに決めた意思を、そのまま届けるだけ。
❌ 違法(民間業者の場合):代理人としての交渉
「法律で2週間で退職できます」「有給を消化させてください」「残業代を支払ってください」と会社に反論・折衝する。これは弁護士法第72条違反(非弁行為)に該当する可能性が非常に高い。
合法と違法の境界線【行為別・運営元別 早見表】
「どの行為が合法で、どこからが違法なのか」——一番知りたいところを、表にまとめました。
| 判定 | 行為の内容 | 民間 | 労組 | 弁護士 |
|---|---|---|---|---|
| ✅合法 | 退職の意思を会社へ伝える・退職届を郵送代行 | ○ | ○ | ○ |
| ✅合法 | 退職希望日(〇月〇日付)を会社に告知する | ○ | ○ | ○ |
| ❌民間NG | 「有給消化させて」と会社に交渉する | ✕ | ○ | ○ |
| ❌民間NG | 退職日の変更・調整を会社と折衝する | ✕ | ○ | ○ |
| ❌民間NG | 未払い残業代の支払いを会社に求める | ✕ | ✕ | ○ |
| ❌民間NG | 損害賠償・パワハラ慰謝料の示談交渉 | ✕ | ✕ | ○ |
| ❌全員NG | 弁護士に利用者を有償紹介し報酬受取(非弁提携) | ✕ | ✕ | ✕ |
民間業者が「交渉」に一歩でも踏み込めば、弁護士法第72条違反になる可能性があります。「有給消化も対応します」とうたう民間業者には、特に注意してください。
運営元別:法的位置づけと業務範囲の整理
退職代行の安全性は、じつは運営元でほぼ決まります。3種類の違いを、ここで正確に押さえておきましょう。
| 法的根拠 | できること | 注意点 | |
|---|---|---|---|
| 民間 | 根拠なし(弁護士法72条の例外なし) | 退職意思の伝達のみ。交渉は一切不可 | 「弁護士監修」と表記しても交渉権は生じない |
| 労組 | 憲法28条・労働組合法6条(団体交渉権) | 退職交渉・有給消化・退職日調整が可能 | 裁判対応・損害賠償請求は弁護士の領域 |
| 弁護士 | 弁護士法(すべての法律事務が可能) | 交渉・未払い金請求・裁判対応まで全対応 | 費用は高め(5〜10万円程度)が多い |
「弁護士監修」=「交渉権あり」ではありません。監修はマニュアルや書類の確認に過ぎず、民間業者自身に交渉権が生まれるわけではないのです。今回のモームリ事件の本質も、まさにこの点にありました。
2026年「モームリ」事件の教訓:「安心」の裏側に潜む構造リスク
① 事件の概要
2026年2月3日、退職代行「モームリ」を運営する株式会社アルバトロス(横浜市)の社長ら夫婦が、弁護士法違反(非弁提携)の疑いで逮捕されました。続く2月24日、東京地検が弁護士法違反罪で起訴。あわせて、紹介を受けていた弁護士法人「オーシャン」「みやび」の代表弁護士2人も、同法違反罪で在宅起訴されています。
※その後モームリは、2026年4月に運営体制を刷新して営業を再開しています。事件は係争中で、最終的な司法判断はこれからです。ここでは「利用者が何に気をつければいいか」という視点で教訓を整理します。
② 容疑の核心:「有償紹介(非弁提携)」という構造
今回問題視されているのは、民間業者が法律事務を特定の弁護士に「有償で紹介」していたという点です。報道によると、2023年6月から2025年2月にかけて計174人の利用者の手続きを特定の弁護士に紹介し、1件あたり約1万6,500円の報酬を受け取っていたとされています。これは弁護士法が厳しく禁じる「非弁提携(周旋)」に該当する疑いがある、というわけです。
「弁護士監修」「労働組合提携」という表示があっても、裏側で不適切な金銭のやり取りがあれば違法になり得ます。看板の言葉だけで安全性を判断するのは、やっぱり危ういのです。
③ 読者が学ぶべき3つの教訓
- 「弁護士監修」は交渉権を意味しない:監修はマニュアルチェックに過ぎず、民間業者が交渉すれば違法・弁護士へ有償紹介しても違法という二重のリスクがあった
- 「労働組合提携」の看板だけでは不十分:表面上の提携より「実際に誰が会社と交渉するのか」「運営実態が透明か」を確認することが大切
- 利用者が被る実害リスク:業者が摘発されると、払った費用が無駄になる・手続きが止まる・自分で弁護士を探し直す手間が発生する恐れがある
この事件を「退職代行はやっぱり怖い」で終わらせてほしくないんです。むしろ逆で、「運営元さえ確認すれば、ちゃんと自分を守れる」という話。追い詰められた人ほど、看板の安心感に飛びつきたくなる。その気持ちを分かったうえで、最後にひとつだけ確認するクセをつけましょう。
合法な退職代行を見分ける5つのチェックポイント
利用する前に、以下の5点を確認してください。すべてクリアできる業者を選ぶことが、トラブルを避ける一番の近道です。「後悔した」という声の多くも、この確認を飛ばしたことから始まっています。
| チェックポイント | 確認すべき内容 |
|---|---|
| ① 運営元の確認(最重要) | 公式サイトの「特定商取引法に基づく表記」で、弁護士法人か認証済み労働組合かを確認する |
| ② 法的根拠の確認 | 「団体交渉権あり(憲法28条)」や「弁護士が直接対応」という根拠が明示されているか |
| ③ 監修表記だけで交渉をうたっていないか | 「監修」は書類チェックに過ぎない。民間業者が交渉を約束していれば弁護士法違反リスクあり |
| ④ 料金体系・返金保証が具体的か | 退職できなかった場合の返金条件・追加費用の有無を、契約前に必ず確認する |
| ⑤ 法人名・代表者名・所在地が明記されているか | 運営実態の透明性の最低条件。これらが公式サイトにない業者は避ける |
「どう選べばいいか、もっと具体例で知りたい」という方は、実際の失敗談から選び方を逆算した記事もあわせてどうぞ。


よくある質問(FAQ)
まとめ:利用者は違法にならない。大切なのは運営元の確認
利用者が退職代行を使うこと自体は、違法ではありません。民法第627条で保障された、正当な権利です。ニュースの見出しに怯えて、自分を守る選択肢まで手放さないでください。
問題は、あくまで業者側の行為にあります。「伝えるだけ」の使者なら合法、「交渉する」代理人なら弁護士か労働組合のみ合法、「有償で弁護士に紹介する」非弁提携は違法。この3つの線引きさえ分かっていれば、もう大丈夫です。
- 公式サイトで、運営元が弁護士法人か認証済み労働組合かを確認する
- 有給消化・退職日調整など交渉が必要なら、必ず労働組合か弁護士法人を選ぶ
まずは無料相談で、自分のケースがどの運営元に合うのかを確認してみてください。それだけで、ずいぶん心が軽くなるはずです。
※無料相談だけでも利用できます。















